無愛想な連中だと思ってたが、ヴォトカがはいると途端に陽気になる。
ロシア語講座のエレーナさんも言っていたが、アメリカ人のようにズカズカと他人のなかに割り込んでくる連中は、ロシア人にとって気が休まらないのだそうだ。開放的で時には図々しく感じるアメリカ人とは違って、ロシア人はとてもシャイだ。他人との接し方は日本人に近いような気がする。
ロシアと日本は友好的な関係だとは言えない。日本人がロシアに対してもつイメージは決して芳しいものではないだろう。だがロシア人の日本観はそれほど悪くない。民主化以降、日本製品もたくさん輸入されるようになって、関心も高い。プログラマー氏は、俺のG-Shockをいい時計だと褒めてくれた。なるほどこういった質実剛健さはロシア人好みかもしれない。モスクワの時計店でもG-Shockをよく見かけた。
「日本ではロシアの何が知られてるいるの?」
英語教師氏にこう訊かれたので、「ドストエフスキー、トルストイ、ゴーリキー…」などと、ロシア文豪の名前を並べたてる。「最近の作家のことは知らないの?」と、彼女は自分の読んでいたペーパーバックを俺に見せる。ミステリー小説のようだが、残念ながら知らない。最近のロシア文化で知ってるのといえば、「t.A.T.u.」ぐらいだ。「Not Gonna Get Us」ならロシア語で歌えるぞ、「♪Нас не догонят, Нас не догонят ! 」。英語女史は醒めた目で僕を見て、「タトゥーはロシアではポピュラーじゃないのよ…」だって。じゃあもう「カチューシャ」とか「カリンカ」とか「百万本のバラ」とか「悲しき天使」ぐらいしか知らないや。とりあえず知ってる限りを歌ってみる。「旧い歌ばっかりね」って、英語女史は淋しそうに言う。いや日本人としてはこれだけ知ってるだけでも大したものだと思うよ。しかもちゃんと(うろ覚えだが)ロシア語で歌ってるじゃないか。
ロシアが民主化してもう10年以上経った。現在のロシア人にとってソビエト時代のことは、とにかく忘れてしまいたいことなのだろう。民主化以前の文化に関する関心は低いようだ。
悲しき天使
ポール=マッカートニーのプロデュースでデビューしたメアリー=ホプキンが、1968年「Those were the Days」のタイトルで発表し、大ヒットとなった曲。日本では森山良子が「悲しき天使」の題名で歌った。
原題は(Дорогой Длинною) で、「長い道を」。1917年の曲で、コンスタンチン=パドゥレーフスキイ作詞、ボリス=フォミーン作曲。ジプシーを連想させるという理由で、ジプシー音楽を排斥していたスターリン時代には一時発禁扱いとなったものの、亡命ロシア人たちの間で歌い継がれていった。