ユーラシア大陸横断の旅
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ロシア映画の世界

かつては映画大国として知られたソ連では、もちろんイデオロギー性の強いプロパガンタ作品も数多く制作された。最近でも「大統領のカウントダウン」(2004)などは政治的意図の濃厚な映画であり、しかもこのような映画に限って大々的に配給されるのである。
大量生産・大量消費が目的の商業的ハリウッド映画とは異なり、ロシア映画には繰り返し鑑賞に堪えうる芸術性がある。エイゼンシュタインが確立したモンタージュ理論。そして特異なカメラアングル、映像美の数々…。映画を芸術と見なしたロシアならではの世界を体験してもらいたい。

 
 
「ククーシュカ ラップランドの妖精(KUKUSHKA/THE CUCKOO)」(2002)/監督:アレクサンドル=ロゴシュキン
北欧フィンランドの最北部に位置するラップランドを舞台に、互いに戦争状態にあったフィンランドとロシアの2人の兵士と、そこに暮らしていた先住民族のサーミ人女性、言葉の通じない3人の奇妙な共同生活をユーモラスなタッチで描いた感動ストーリー。
声高にではなく平和を唱えるメッセージ性をもちながら、ウィットに富んだユーモラスな語り口、心温まるラストに至るまでの丁寧な演出が高い評価を受け、モスクワ国際映画祭で最優秀監督賞、最優秀男優賞など5部門を受賞した。
 
 
「フリークスも人間も(ПРО УРОДОВ И ЛЮДЕЙ)」(1998)/監督:アレクセイ=バラバノフ
写真全盛期、映画創生期のサンクト=ペテルブルグが舞台。猥褻写真家の欲望に翻弄されるブルジョア家庭の悲劇を描いた異色のドラマ。
全編モノトーン。なぜかというとカラーにするとタダのエロ映画になりかねないからです。名作度は高いと思いますが、やはりキワモノの部類に属するでしょう。
ちなみに「フリークス」とは奇形のことで、モンゴル系のフリークスが登場しますが、やはりこの映画のキモはスパンキングです。スパンキング好きな方はどうぞ。
 
 

「こねこ(Котёнок)」(1996)/監督:イワン=ポポフ
低予算で制作された児童向映画。

トラ猫“チグラーシャ”の冒険物語です。
こういう映画がDVD化される(つまり支持される)限り、世界がハリウッド化されることはないだろう、という期待を込めて一票。巨大資本と最新技術など、映画制作にはむしろ有害でさえある。そもそもブタがしゃべる映画なんて気色悪くてトンカツ。(「ベイブ」)
サーカスネコ“ジンジン”のジャンプ可愛いー! そういえばモスクワにネコのサーカスがあったっけ。フェージン役の“俳優”さんの本業がネコの調教師なのだそうです。監督のイワン=ポポフも元グラフィックデザイナーとかで、なるほど画面構成も見事なもの。「子猫物語」(1986)/監督:ムツゴロウのように滝から突き落とすシーンはないので、安心して観れますが、全編にわたるこのもの悲しさは…。

 
 
「エルミタージュ幻想(Русский Коъцег)」(2002)露独日合作/監督:アレクサンドル=ソクーロフ
ロシアの名匠アレクサンドル=ソクーロフ監督が、世界遺産のエルミタージュで、ハイビジョンカメラと大容量ハードディスクを用いて、本番1回、90分1カットで撮り上げたアートフィルム。映画に興味を失った監督が、芸術的様式美を一息で表現してしまいたかったのだとか。画面の外からの声を監督自身が担当し、彼と劇中のフランス外交官キュスティーヌとの会話によってロシアの近世近代の歴史300年がひも解かれていく。クライマックスの舞踏会は圧巻で、流麗に動き回るカメラワークで幻想的なまでに美しい映像だ。
 
 
「ロシアン・ブラザー(ВРАТ)」(1997)/監督:アレクセイ=バラバノフ
ロシアの閉塞的な現状を描き、若者の圧倒的支持をうけて国内で、その年の興行ベストワンとなる大ヒットを記録した作品。
 
 
「モスクワは涙を信じない(МОСКВА СЛЕЗАМ НЕ ВЕРИТ)」(1979)/監督:ウラジーミル=メニショフ
ソビエト国内で公開されるや、公開5ヵ月にして6900万人の観客を動員、その年のソビエト映画のベストワンにも選ばれた作品。ソ連映画としては珍しく、軽快なタッチでテンポ良く描かれている。モスクワを舞台に、3人の女性の悲喜交々の人生を時に激しく、時にユーモラスに描いた群像ドラマ。
 
 
「一年の九日(9 Дней Одного Года)」(1961)/監督:ミハイル=ロンム
ミハイル=ロンム監督の代表作。スターリン賞を受けるなど、時代の要請に従った作品づくりをしていたロンム監督だが、「雪どけ」以降は革新的な映画制作につとめた。タルコフスキー・コンチャロフスキー・チュフライら多くの俊才がロンム監督に師事したことでも有名。
愛と友情で結ばれた男女3人の物語なのだが、舞台はシベリアの地方都市にある原子力研究所。核融合の実験をしている…。設定は時代を感じさせるが、大胆なカメラワークとスリリングな展開で、これまでの映画の常識を打ち破り、数々の映画賞を受賞した話題作。
 
 
「光と影のバラード(СВОЙ СРЕДИ ЧУЖИХ. ЧУЖОЙ СРЕДИ СВОИХ)」(1974)/監督:ニキータ=ミハルコフ
ニキータ=ミハルコフ監督の処女作。1920年代の食糧難の危機に晒されているロシア情勢を背景に、金塊護送任務に就いた赤軍兵士・シーロフと、白軍やアナーキストたちとの攻防戦を描く。
監督自身が盗賊の頭目ブルィロフ、白軍大尉レムケには「ストーカー」のアレクサンドル・カイダノフスキーが演じている。

 
 
「愛の奴隷(РАБА ЛЮБВИ)」(1976)/監督:ニキータ=ミハルコフ
ニキータ=ミハルコフ監督の出世作。1918年、革命直後の黒海沿岸。歴史が帝政から革命の時代に大きなうねりを見せる時を迎え、映画に携わる文化人たちまでも、否応なしに時代の波に巻き込まれていった様子を淡々と描いている。

 
 
「オブローモフの生涯より(НЕСКОЛЬКО ДНЕЙ ИЗ ЖИЗНИ И.И. ОБЛОМОВА)」(1979)/監督:ニキータ=ミハルコフ
19世紀に活躍した文豪、イヴァン=ゴンチャロフの原作で描くドラマ。無気力で怠惰な生活を送るオブローモフと、そんな彼を囲むふたりの男女との人間模様を、軽快に風刺を交えて綴る。ニキータ=ミハルコフ監督の「機械じかけのピアノのための未完成の戯曲」につづく長編第5作で、1980年カンヌ映画祭に出品されて評判となった。
 
 
「シベリアの理髪師(The Barber of Siberia)」(1999)/監督:ニキータ=ミハルコフ
ニキータ=ミハルコフ監督が初めて英語で撮った作品で、19世紀帝政ロシアを舞台に描かれる壮大なラブ・ロマンス。
ソ連崩壊後のロシア映画としては最大規模、ヨーロッパ映画としてもかつてない製作費を投入した作品。カンヌ映画祭ではオープニングを飾り、本国ロシアでは、クレムリンで行われたプレミアにゴルバチョフなどの要人を招き、ミハルコフ監督の政界入りの噂と相俟って「ミハルコフ現象」を巻き起こした。

 
 
「戦艦ポチョムキン(Броненосец 'Потёмкин')」(1925)/監督:セルゲイ=エイゼンシュテイン
「第1次ロシア革命20周年記念」として製作された無声映画。1905年に起こった戦艦ポチョムキンの反乱をもとに製作された。
モンタージュという映像文法の基礎を確立させ、映像表現を飛躍的に向上させることになった映画史上に残る大傑作であり、この作品を観ずして映画は語れない。
共産主義的プロパガンダ色が強いため、海外での公開は検閲を受け、多くの場面がカットされるなど難航した。日本での公開も遅れに遅れ、初公開されたのは1967年のことであった 。
 
 
「イワン雷帝(ИВАН ГРОЭНЫЙ)」(1944~1946)/監督:セルゲイ=エイゼンシュテイン
エイゼンシュテイン監督の遺作。イワン雷帝の生涯をダイナミズム・タッチで描出していく。第1部は封建貴族と対立するイワンが民衆に支持される道程を描く。第2部では圧制によって彼が“雷帝”と民衆に恐れられるさまが描かれる。
本来3部作として構想されていたが、第2部の編集中、弾圧の描写がスターリン批判と受け止められ、改作を求められたが、第2部の改作も第3部の撮影にも着手することなくエイゼンシュテインは亡くなった。第3部のシナリオには、雷帝の懺悔のシーンに、スターリンの粛正にあった人々の名前が記されているという。
日本文化に傾倒していたエイゼンシュテインは、歌舞伎や能といった様式美をこの作品に取り込んだ。第2部はラストがカラーとなり、その極彩色から新たなる映像実験の意気込みもうかがえる。
映画史を語る上で極めて重要な作品。
 
 
「鶴は翔んでゆく(ЛЕТЯТ ЖУРАВЛИ)」(1957)/監督:ミハイル=カラトーゾフ
日本初公開時の邦題は「戦争と貞操」。ちょっとあんまりなタイトルだったので改められたが、カラトーゾフ監督の代表作であり、かつソ連初のカンヌ映画祭グランプリ受賞作品なのであるから、勝手に変更されると探すのに苦労するではないか。
ヴィクトル=ローゾフの戯曲「永遠に生きるもの」の映画化。第二次大戦下の青春を描く、心やさしく叙情的な恋愛物語である。
戦後の映画史に「雪どけ」の到来(スターリン時代の終焉)を告げた記念碑的作品であり、それ以前には考えられなかった反戦のメッセージが込められた映画だった。
 
 
「ざくろの色(Цвет Граната)」(1971)/監督:セルゲイ=パラジャーノフ
タルコフスキーと並び称される旧ソ連の巨匠・セルゲイ=パラジャーノフの代表作。夢幻的で緻密な映像詩はゴダールを始めとする映像作家に影響を与えた。
 
 
「スラム砦の伝説(ЛЕГЕНДА О СУРАМСКОЙ КРЕПОСТИ)」(1984)/監督:セルゲイ=パラジャーノフ
中世クルジアの伝説を元に一組の恋人たちの数奇な運命を描いたファンタジー。国防のために砦が作られ、女予言者の進言で生贄が出されることに。しかし、犠牲となったのは、かつて女預言者を捨てた恋人の息子だった 。
 
 
「アシク・ケリブ(АШИК-КЕРИБ)」(1988)/監督:セルゲイ=パラジャーノフ
ロシアの詩人・ミハイル=レールモントフの原作をセルゲイ・パラジャーノフが映画化。貧しい吟遊詩人、アシク・ケリブは領主の娘・マグリに結婚を申し込むが、彼女の父親に一蹴されてしまう。アシクは身を立てるため旅に出るのだが…。
 
 
「ロマノフ王朝の最期(АГОНИЯ)」(1975)/監督:エレム=クリモフ
第一次世界大戦に破れ、経済破綻、各地では民衆運動が勃発するなど、まさに地獄と化した当時を背景に、帝政ロシア最後の王朝ロマノフ家のニコライ2世とその家族の最期を、当時の貴重な記録フィルムを挿入しながら独特のタッチで魅せた。「ラスプーチンを通して王朝政治崩壊の歴史的必然性と、その致命的な病いを描こうとした」と、クリモフ監督自身語る歴史的大作。製作には7年が費やされ、1975年には完成していたものの、公開は1981年まで棚上げされていた。
 
 
「人間の運命(СУДЬБА ЧЕЛОВЕКА)」(1959)/監督:セルゲイ=ボンダルチュク
セルゲイ=ボンダルチュク監督による戦争ドラマ。1942年、ドイツ軍の捕虜となり2年間を過ごしたソコロフは、脱出に成功し祖国へと戻る。しかし、そこで待っていたのは妻子の無残な消息だった。
戦争の中の人間の悲しみと孤独、そして勇気を、原作の持ち味であるヒューマニティを見事に捕らえながら描かれた作品。
 
 
「戦争と平和(ВОЙНА И МИР)」(1965~1967)/監督:セルゲイ=ボンダルチュク
オードリー=ヘプバーン主演のハリウッド版の方が有名だが、こちらは本家本元のソ連版「戦争と平和」。さすが本家、気合いが違う。DVDで5枚組、431分、7時間強という、資本主義的商業論理を真っ向から否定する正真正銘超大作である。原作を読んでハリウッド版が物足りなかったという人は、ぜひこちらをどうぞ。ただし全部観通すには根気と集中力が必要です。
冷戦時代の国策映画としての側面はあるものの、原作に対する敬意と評価は当然ながらこのソビエト版の方が上。ハリウッド版などゴミに過ぎません。
参考:
戦争と平和」(オードリー=ヘプバーン主演版)
 
 
「ハムレット(ГАМЛЕТ)」(1964)/監督:グレゴリー=コージンツェフ
シェークスピア生誕400年を記念して作られた。
シェイクスピアの作品の中でも最も多く映画化されている「ハムレット」だが、このグレゴリー=コージンツェフ監督作品は、本場イギリスでも絶賛され、これ以上の「ハムレット」はないとまで言われる。シェークスピア劇に造詣の深いコージンツェフ監督の代表作。
ドミトリー=ショスタコーヴィチは、コージンツェフ監督と深い交友関係にあり、コージンツェフ作品の音楽のほとんどを手がけている。
 
 
「リア王(КОРОЛЬ ЛИР)」(1971)/監督:グレゴリー=コージンツェフ
コージンツェフ監督の遺作となった作品。シベリアで撮影された雷雨のシーンは映画史に残ると言われている。リア王の役には、エストニアの舞台俳優ユーリー=ヤルベットが起用され、"その血も肉も彼自身がリア王なのだ"と評されるほどに迫真の演技をみせた。
長年、コージンツェフ監督と組んだ作曲家・ショスタコーヴィチにとっても、これが最後の映画音楽となった。
 
 
「罪と罰(ПРЕСТУПЛЕНИЕ И НАКАЗАНИЕ)」(1970)/監督:レフ=クリジャーノフ
ドフトエフスキーの傑作文学の映画化。世界各国でこれまで映画化されてきたものの、ロシア人が映画化するのは本作が初めて。ロシア人にとっては聖典のような小説であり、ソ連邦映画人同盟書記長を長く務めたレフ・クリジャーノフ監督が10年来の構想を実現させ、本場の威信に賭けた決定版。
参考:
罪と罰」(アキ=カウリスマキ監督版)
 
 
「アンナ・カレーニナ(АННА КАРЕНИНА)」(1967)/監督:アレクサンドル=ザルヒ
欺瞞に満ちた社交界と家族を捨て愛に生きる女の人生を描いた、レフ=トルストイによる名作。グレタ=ガルボ、ソフィー=マルソー、ビビアン=リーと、幾人もの名女優が演じてきたが、こちらは正真正銘本家本元のロシア版。
参考:
アンナ・カレニナ」(グレタ=ガルボ主演版)
アンナ・カレニナ」(ビビアン=リー主演版)
アンナ・カレーニナ」(ソフィー=マルソー主演版)
 
 
「チャイコフスキー(ЧАЙКОВСКИЙ)」(1970)/監督:イーゴリ=タランキン
作曲家チャイコフスキーが多数の名曲を生み出すまでの内面的な苦悩と、愛を、「ピアノ協奏曲第一番」「悲槍」ほか幾多の旋律に乗せて描いた伝記映画。
 
 
「妖婆 死棺の呪い(Вий)」(1967)/監督:コンスタンチン=エルショフ・ゲオルギー=クロパチェフ
邦題がちょっとアレですが、ロシアSFXカルトとして有名な作品。原題は原作の怪奇小説と同じく「Вий」(1833)。南部ロシアの土着宗教に見られる精霊のことで、あらゆるものを見通す力を持つという。
中世のロシアの修道院がある村で、若い娘の葬儀を取り仕切ることになった神学生・ホマーの周囲で起こる恐怖と幻想の世界を描いたもので、グロテスクな世界を見事な特撮シーンで綴っている。
 
 
「鬼戦車T-34(ЖАВОРОНОК)」(1964)/監督:ニキータ=クリヒン・レオニード=メナケル
ちょっと邦題がアレですが真面目な作品。 原題は「ヒバリ」の意味で、雲雀の囀りが、つかのまの平和の象徴となっている。
「鬼」の意味がよく分からないものの、この映画の主役はまぎれもなくT-34である。強力なドイツ装甲部隊の前に立ちはだかり、ソ連軍反攻の原動力になった戦車部隊において中核を担っていたのが、このT34戦車であったのだ。
>>(参考資料)ルーマニア軍のT-34/85 【撮影:YAM@管理人】
 
 
 
 
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