ユーラシア大陸横断の旅
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シベリア鉄道(前編)「ウラジオストク~イルクーツク」
2005. 0316-0319
ウラジオストク駅
シベリア鉄道でイルクーツクへ向かうべくウラジオストク駅へ。英語の表記は皆無なので清々しい。英語など敵国の言語。さすがかつてアメリカと世界を二分した国家である。おかげで荷物の預け場所すらよく分からん。ピクトグラムぐらいあってもよさそうなものだが…。

駅前で食料を買い込む。何せ3泊4日も列車で過ごすのだ。

路上で売っているクーラーボックス(!)に入ったアツアツのピロシキは旨そうに見えるが、何個も食べると気分が悪くなる。油が古いせいだ。しかも夕方頃に買うピロシキは油がまわっていて最悪。一個食うと食欲がなくなってしまう。
さらに 問題なのは中身だ。ロシア語が達者でなければ、いったい何が入っているのか分からない。必ずしも日本でおなじみの挽肉の入ったヤツとは限らず、キャベツの酢漬けの入ったのや、ジャガイモの蒸かしたのが入ったヤツもある。挽肉は血も内臓も一緒くたにしているらしくベチャベチャで、しかも臭いので注意が必要。キャベツの酢漬けは好みの問題だが、ソーセージでも入っているのならともかく、ザワークラウト単体では一寸いただけない。ジャガイモはパサパサで、喉を通っていかないため、ミネラルウォーターで流し込もう。

ウラジオストク駅の待合室で日本人学生と出会った。シャープカ(毛皮の帽子)を買ったのだそう。いいなあ、俺もモスクワで買うことにしよう。彼は一気にモスクワまで行くらしい。7日間はキツそうだが、それよりもイルクーツクおよびバイカル湖に立ち寄らないのはもったいなくはないのか?


line     line   シベリア鉄道「ロシア号」最後尾。本当は機関車を撮りたかった。車掌のオバサンは、こちらの片言ロシア語に気を良くしたのか、手をふってくれた。   line


ロシア号2等車
まるで銀河鉄道999に乗るかのようにわくわくする。ただしメーテルはおらん。
ロシア号に乗り込む前に、機関車を撮影すべく、重い荷物を担いで最前部へ向かう。しかし辿り着いたのは最後尾だった。今さら最前部へ行く時間はない。何しろ16両だか18両だか忘れたが、とても長いのだ。仕方がないので最後尾で記念撮影する。各車両にいる車掌は大半が女性だ。典型的なロシア風マトリョーシカおばさんなので、無愛想に違いないと思ったが、何日もお世話になるのだ。とにかく挨拶して媚びを売って、カメラに収まってもらう。ソビエト時代は列車も機密レベルが高くて撮影禁止だったようだが、意外にも明るく笑顔で対応してくれた。写真を撮る前、ここでも「何人か?」と訊かれはしたが。
シベリア鉄道の車掌さん、着ているものだけはメーテルに似ている…。

車掌さんに案内されて列車に乗り込む。結局この最後尾の客車に乗ることになった。
しばらくして同室にロシア人が乗り込んできた。ハイスクールの体育教師だとか言っていた。バスケと截拳道(ジークンドウ)を教えているのだそうだ。妙な取り合わせ。今はチェスに興じてるそうで、棋譜を見せられるが、残念ながらこちらはチェスなんか知らない。お互い頼りない英語でウダウダとスポーツの話。そういえばロシアって柔道が盛んだった。でもこちらの関心は主にマリア=シャラポワ。「シャラポワ」の正しいロシア式発音を教えてもらった。 「シャラーポワ」と発音しないと通じないそうだ。(最初まったく通じなかった…。)

話題も尽きたので寝る。

ようやく寝付いた頃、途中の駅から中国人らしき男が、車掌に案内されながら乗り込んできた。この車掌は、さっき写真を撮らせてもらったオバサンなのだが、俺に起きろと言う。しかもカバンを持って客室の外に出ろだって。俺のいた寝台には後から乗り込んできた中国人を座らせてしまった。何で先に乗車した俺が放り出されるのだ? こちらも寝ぼけているし、車掌はロシア語しか解さないので、状況がまったく分からない。とにかくコンパートメントを移れということらしい。さっきの笑顔と違って険しい表情だ。ロシア語で何か書いた紙切れを渡されたので、それを持って車両を移動する。何だろう、これ…。手書きのロシア文字は、どうあがいても読めない。

各車両の客車内は暖房が効いていて暖かく、半袖でも過ごせるほどなのだが、連結部は凍死するほど寒い。重い荷物を抱えて、連結部のクソ重たい扉を開け、20℃ほどの温度差を幾度となく体感しつつ、各車両の車掌に、さっき渡された紙切れを見せるしか手段がない。「違う」「もっと先だ」などと言われ続け、10両ぐらい移動しただろうか。やっと「ここだ」と言われた。


line     line   赤いカーテンに、敷物、そして鉢植えの植物で飾り立てられており、2等よりずっと雰囲気は豪華。ただし部屋の居住性は2等とさほど変わらない。コンパートメントのベッドも2等と同じく4つあるのだが、1等の場合、どうやら2人しか入れないらしい。しかしどうだろう、同じヤツと3日間ふたりっきりというのも嫌なものなのである。   line


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  line   1等車のトイレ。2等車のものと変わりはない。意外と広くて意外と清潔なのである。   line


ロシア号1等車
しかしここはどうもさっきまでいた車両とは様子が違う。窓枠のカーテンは豪華だし、花まで飾ってある。どうやらここは1等車らしい。別に差額を請求されたわけでもないので、2等車の車掌さんが好意からか気を利かせて、タダで1等車に移してくれたらしい。てっきり嫌がらせかと思った自分が情けない。さっきもらった紙切れは、差額分の領収書だったようだ。しかし1等車は、列車の先頭部分にあるのだ。最後尾から狭い通路を通ってここまで辿り着くのは大変だった。さらにここに来て気づいたが、あわてていたので、せっかく買ったピロシキを2等客車に忘れてきてしまった。取りに戻ったところで、もうどこだったか分からないだろう…。

でも1度の乗車で、2等と1等の両方を体験できるのは嬉しい。何しろ料金は倍以上違うのだ。
1等車での同室者は、現役の軍人だった。やけに小柄だと思ったら潜水艦乗りだと言う。「パドヴォードヌィ・スィーラヴィ」。直訳すると、「水中の軍隊」となる。ウラジオストクから乗り込んでいたということは太平洋艦隊に所属していたことになる。19歳だとか言っていたから、志願兵だろう。階級を聞き忘れたけれども、軍人は皆んな1等車の切符を支給されるのだろうか。休暇で実家のあるバイカル湖畔の町へ帰省するのだそうだ。さすがに潜水艦乗りだけあって、平行棒の要領で上段のベットにひょいっと器用に上がっていく。

ロシア号には食堂車もあるが、利用する人はほとんど見かけなかった。バカ高くて、たいして旨くもないそうなのである。停車駅には物売りが集まるので、皆もっぱらそこで買ったものを食べている。シベリアは食文化でも中国の影響を受けてきたので、小籠包みたいなのもあった。蒸してあるのではなく、茹でてあるので、水餃子みたいな様相をしている。潜水艦君もこの饅頭を買っていたが、食べる前に必ず割って中身の匂いを嗅いでいた。腐敗している可能性があるからだろう。考えてみれば、仮に腐ったものを売りつけたとて、シベリア鉄道の客がわざわざ引き返してきて文句を言いに来るはずもない。自衛手段をとるのももっともだろう。以後俺もこれに倣うことにする。

潜水艦君がカップ麺を買ってきた。ハングル文字のカップ麺だ。車内ではカップ麺を常食している人をよく見かける。潜水艦君が買ってきたのは、日本でいうところのカップ焼きそば風の容器に入ったカップ麺だ。麺をこなごなに砕いてから熱湯を注いで、スプーンで食べ始めた。ところが半分も食べずに捨ててしまった。よほど口に合わなかったのか、それとも本当はカップ焼きそばだったのか…。

各車両にはサモワールがある。ロシア文学ではおなじみのアレだ。どんなものか一度見てみたかった憧れの品である。メーターのついた無骨なただの湯沸かし器なのだが、ロシアを感じさせてくれてなかなかよろしい。洒落た取っ手つきの耐熱グラスを無料で貸してくれるので、好きなときに白湯を飲める。ただしバカみたいに熱い熱湯が、ブシュシュとほとばしり出てくるので、ヤケドをしないように注意が必要だ。

潜水艦君は、やたらたくさん紅茶のティーバックを持ち込んでいて、俺にもくれたのでそれを飲む。インスタントコーヒーでも持ってくるべきであった。

客室内はロシアでも禁煙。皆んなどこで吸うのかと思ったら、連結部に集まっている。なるほどここには灰皿もある。しかしここは暖房が入っておらず、氷点下の寒さだ。ロシア人たちは短時間なら平気なのか、半袖のまま来ているヤツもいる。こちらは耐えれるはずもないので、いちいちタバコを吸うにも着込んで出かけていかねばならない。めんどくさいのでタバコの本数も減ってしまった。潜水艦君はタバコを吸うくせにウォッカを飲まないのでつまんない。
ちなみにこちらで吸っていたタバコはWinstonLights。ロシア極東からヨーロッパ全域で売っている。日本ではどういうわけかこのライトだけは見かけないが、JT International製のタバコだ。ウラジオストクでは18~19ルーブル。シベリア鉄道の途中駅で買うと25ルーブルした。
地理的には近い距離にあるのだから、日露貿易はもっと盛んになってもよいように思う。そうならないのは、北方領土の帰属問題のほか、ロシア側の通関・税制度が不透明かつ複雑であるからだ。JTのロシア販売子会社も付加価値税の未納とかで、約24億ルーブルもの追徴課税を通告されている。ただロシアもWTO(世界貿易機構)加盟を目標にしているので、ロシアの不透明な取引慣習や関税障壁なども解消される可能性はあるだろう。


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  line   車窓からの風景。これは森が途切れて、シラカバがまばらに生える平原に出たところ。まあこういった風景が延々と何日も続く。   line


シベリア鉄道における暇つぶし
あいかわらず車窓は汚れているので、外の風景はあまりよく見えない。車両の連結部の窓は比較的きれいだったので、外の風景がよく見えた。しかし見えたところでひたすら同じような風景が続くだけである。ひと晩寝て、翌日見てもまったく同じ風景が続くのだ。森林もしくは草原が延々と続く。樹相も単調で、たいていはカラマツの暗い緑色が灰色の空との境目に流れる。少しひらけた場所にはシラカバが群生していた。車窓から眺めただけでは、シベリアの自然を描く表現はすぐに尽きてしまう。単調だよ…。

確かにヒマだ。これが船旅ならメシを食うのもフロに入るのも賑やかなのだが、ここではメシを食う時間も特に決まっているわけでもない。相手は潜水艦君だけ。お互いに持ち込んだものを広げておいて、腹が減ったときに勝手に食っている。特に断りもなく相手のものを食いあう。当たり前だがフロなどない。そういえばモスクワまで一気に乗ったとしたら、7日間フロに入らないことになるわけか。

「罪と罰」を読む。「罪と罰」読了。

列車がイルクーツクへ近づくと、風景が一変する。神秘の湖・バイカル湖が見えてくるからだ。客室の窓は汚れていてよく見えん。連結部に行く。…でもこの季節のバイカル湖は、まだ凍っている。見た目は雪に覆われた平原が広がっているようで、思っていたほど感動が沸いてこない。何しろとてつもなくでかいのだ。広さは琵琶湖の約50倍。いま眼前に果てしなく広がっているのは、バイカル湖のほんのごく一部でしかないのだ。だがいつまでも眺めていられるものではない。連結部は氷点下なのだ。部屋に戻って横になる。本を読む。うとうとする。起きる。まだ広がってらあ、バイカル湖…。


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  line   バイカル湖。地平線のかなたまで凍っていて、大地とひとつながりになっていた。クルマで走れるほどなので、沖まで乗りつけて、氷に穴を開けて釣りをしている人もいる。   line


潜水艦君は几帳面で神経質だ。ベッドのシーツは常にピシッとしててシワがない。脱いだ服はきちっと畳んでおき、コンパクトなスペースにまとめている。潜水艦乗りの性を感じる。

イルクーツクに近づくと、靴を磨き、軍服にブラシをかけはじめた。軍装を自慢しだしたので、着させて写真を撮る。俺にも着てみろと言うが、ちっちゃくて入んないのだ。
肩章がはずれかけていたので、潜水艦君は隣から針と糸を借りてきて縫い始める。


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  line   潜水艦氏。軍装に着替えてもらった。下半身はジャージ姿なのだが、険しい表情でポーズを決めてくれる。右肩のロシア国旗が外れかけているのを、このあと猛烈に気にしだした。   line


別れ際、あまってたチャイ(紅茶)と角砂糖を潜水艦君からもらった。
 
 
マリア=シャラポワ(Мария Шарапова
1987年4月19日、ロシア シベリア地区のニアガン生まれ。現在はアメリカ合衆国フロリダ州ブラーデントンに在住。身長183cm、体重:59kg。
エンジニアの父ユーリと母エレナの子として生まれ、4歳のときからテニスを始める。6歳の時、モスクワでエキジビションの試合に出場してマルチナ=ナブラチロワの目に留り、米国へ行くのがベストとの忠告を受ける。父ユーリと6歳のマリアは、母を残し、わずか900ドルを持って米国に渡りフロリダのブラーデントンに流れ着いた。ビザとお金の問題で母が合流できたのは2年後であったが、貧乏に耐えながらテニスを続け、9歳になってニック=ボロテリー・テニスアカデミーに入ってさらに上達した。オースチン、ダベンポート、サンプラスを育てた伝説のコーチであるランズドルフのコーチを受けるため、大陸を横断してカリフォルニアまで出向くのもしばしばであった。16歳の2003年のウインブルドン大会では、ドキッチ等を破ってベスト16に進出して注目を集めた。そのプレーぶりだけでなく、その美貌からクルニコワ2世と騒がれパパラッチの格好の標的となっている。彼女の唯一の悩みは、ボールを打つ時に無意識に発する激しい叫び声やかなきり声や悲鳴だ。これについてはランズドルフからも改善指令が出されている。2003年にはジャパンオープンでも優勝したので、日本のファンにもおなじみとなった。
 
 
 
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